宴会芸をプロデュース

「模倣じゃない、オマージュだ」の考えでやってます。

いくつかのポリシー

宴会芸をプロデュースするにあたって、いくつかポリシーがあります。

 

ひとつは、芸とは無縁の大人しい社員に出演してもらうこと。そういうギャップがあるほうがウケやすいんですよね。逆にノリノリすぎると、うまくいかないケースが多いです。

 

次に、ブレイク直前の芸人を狙ってパロディすること。全社員が知っているくらい流行っているネタをやっても、こちらがおもしろくありません。かといって認知度ゼロでも白けるので、そのギリギリのラインを攻めることになります。

 

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あとは、できる限り再現率を高めること。それもお金をかけずに(なかなか難しいです)。2014年末の忘年会で8.6秒バズーカーの「ラッスンゴレライ」を披露したのですが、右の彼にはかなりの期間、散髪を我慢してもらいました。

 

 

壮大な宴会芸のオチの行方は?

「アイドル」をコンセプトにした2013年秋の宴会芸についても随分長くなりましたので、そろそろ終わりにしようかと思います。

 

オチについて一つ構想がありました。それはゲストとして参加している内定者をステージに上げること。秋の社員旅行には内定者が参加することが恒例となっており、それを利用したサプライズ企画を目論んでいたのです。

 

当然オチにはフリが必要となります。そこでメンバーを見渡したとき、フリ役になってくれるベストな人材に気づきました。いつでもMAXハイテンション、やることなすこと空回りしちゃう、お調子者のNリーダーです。

 

Nリーダーに往年のスーパーアイドル・光GENJIの「かーくん」役を拝命(役名は「ゆうくん」です)。振り付けはすべて彼任せで、練習のたびに変わりましたが、それでも本番は完璧に演じきってくれました。Hが放った「Nリーダー、ローラースケートまで空回りしてますやん」というセリフは今でも心に焼きついています。

 

2013年に、なんでまた「パラダイス銀河」?その時代錯誤感と筋金入りの空回りで場をあえて白けさせ、それを回復するために壇上にいる男4人で「最近のアイドルの曲を踊ってみよう」という流れをつくります(相当強引ですが)。

 

それは嵐。しかも曲は「A・RA・SHI」。よく考えたら新しくもなんともないのですが、ここまで来たら突っ走ります。

 

チャラッチャッチャ〜チャララ チャラッチャッチャ〜♪

ユアマイソウソウ!いつもすぐそばにある〜♪

 

と、まぁまぁのおっさんたちが一生懸命踊るわけです。

でも、なぜか盛り上がりに欠ける。

 

僕「う〜ん、何か物足りんよなぁ。何が足らんのやろ?」

M次長「そら、4人しかおらんからな」

僕「僕は一応、大野くん、やりました」

M次長「俺、相葉ちゃん」

H「僕がニノで…」

Nリーダー「ゆうくんでーす!(親指を立てスマイル)」

(M次長・H・僕でNリーダーを一斉につっこんで客席に落とす)

Nリーダー「櫻井くん…です…」

H「ということは、足らんのは…」

4人 「(向き合って声をそろえて)マツジュン!」

 

そして、嵐の松本潤と同姓同名のマツモトジュンくん(漢字は違います)がとまどいながらステージに上がり(もちろんバッチリ仕込んでいますが)、5人で「A・RA・SHI」を踊って大団円。客席からは大きな拍手と「なんで踊れんねん!」という狙い通りのツッコミが飛んできました。

 

こうして見事にオチも決まり、20分にも及ぶステージは幕を下ろすわけです。

 

モノマネのモノマネ

前田敦子のAKB卒業が2012年3月のことですか。もう随分前の話になりますね。ただ、今でも卒業挨拶のシーンは頭に残っています。感動的かどうかは別にして、インパクトはあったよなあ。それは芸人のキンタロー。の(悪意ある)モノマネが多分に影響していると思いますが。

 

今回の宴会芸では、前田敦子のモノマネではなく、前田敦子のモノマネをするキンタロー。のモノマネということで、ひとつネタをこしらえました。演者は会社の総務チームのチームマネージャーです。

 

「もちろん、私のことが嫌いな人もいると思います。でぇ、みなさんにひとつだけお願いがあります。あたしのことは嫌いでも、総務チームのことは嫌いにならないでくらたい!」(お辞儀)→そして、フラつきながらの「フライングゲット」。

 

アイドルといえば・・・オタク

僕は「メンバー全員参加型」を信条としていますので、宴会芸において完全な裏方は基本的につくりません。どんなチョイ役でも舞台に上がってもらう。そんななか、BとDの2人()の配役について頭を悩ませていました。どちらかといえば2人とも普段のキャラが薄いので、よっぽど振り切らないと中途半端になってしまいます。「男装アイドル」なんていうアイデアも出ましたが、スベりそうな臭いがプンプン・・・。で、最終的に採用したのが「オタク」でした。アイドルといえばオタク。「お野菜のメモリーズ」でヘルプに入ってもらったオタク2人()をベースに、とことんキモくアレンジし、「アイドルの有識者」という立ち位置で登場してもらうことにしました。

 

B・D  (舞台下手より、二人くっついてアイドル雑誌を見ながら登場)

 B「ヤキ氏、ヤキ氏。次にブレイクするアイドルについて、ヤキ氏はどう見るでありますか?」

D「それは愚問!」

B「なな、なんと!」

D「この世は群雄割拠のアイドル戦国時代!」

B「鉄道アイドル、落語アイドル、自衛隊アイドル・・・正直もうわけがわからんであります」

D 「しかーし!最後に勝つのは、王道アイドルに間違いないでござるよ!」

B「王道アイドル?つまり原点回帰、というわけでありますか?」

D「その通り!」

B「さすがはヤキ氏!20周年だろうが何だろうが、原点は決して忘れてはいけない。いやぁ、深いですなぁ」

D「ですなぁ」

B「ですなぁ」

B・D    (「ですなぁ」を連呼しながら下手へ退場)

 

・・・うーん、この人たちはいったい何を言っているんでしょう?それでも、ブリッジ(お笑い用語でショートコントなどの連続したネタの間にはさむ言葉や動作のこと)的な役割を見事に果たしてくれました。

 

ハナのネタ

もうひとつ、どうしてもやりたいネタがありました。それはハナのネタです。ハナといっても、花ではなく鼻。そう、吉本新喜劇帯谷孝史のテッパン、ポットネタです。今回はメンバーに大きな鼻がチャーミングなM次長がいたので、もうこれしかないと思いました。そして、もともとが練りに練られた秀逸すぎるネタなので、オマージュの意味も込め、そのまま拝借させてもらうことにしたのです。ボケ役のHがまたいい味を出してくれました。

 

H 「まぁ、ええんちゃいます?だいぶ形も見えてきたことですし、ここらでちょっと休憩して、コーヒーでも飲みましょか」
僕「あ、ええね」
H「…ん?…あれ?ポットどこいきましたっけ?(奥の方を探しながら)えーっと、えーっと…」
僕「え?ポット?…ん?」
M(下手より登場)「お〜い、邪魔すんで〜」
僕「邪魔するんやったら帰って〜」
M「あいよ〜(と引き返しかける)。(僕の方を振り返って)いや、なんでやねん!」
H「誰や、こんなとこに置いたんわ、もう~。(Mの頭を押してお湯を出そうとする)すぐ入れますね〜」
M「おい、それ何やっとんねん、お前」
H「(Mの頭を押しながら)いや、これ、お湯出して…」
M「出ぇへん、出ぇへん」
H「(Mの頭を押しながら)いや、さっき社長用のコーヒー入れてんから出るはずや」
M「(Hの手を振り払いながら)出ぇへん!(食い下がるHの手を再度払う)出ません!(もう一回)出ぇへんつってるやろ、ほんまにもう!(後ろを向きながら鼻をすする)」
H「(僕に向かって)あ、今ちょっと出ましたよね!」
M「(Hの方を振り向いて)いや、違うがな!これ、今風邪引いてるから鼻水が出てん。な?なんでこんなバーッお湯出んねん!」
H「あ、そうですか。お湯出ない?」
M「当たり前やないか!」
H「なんで出ぇへんのやろ?ちょっとすんません。(Mの首筋を見ながら)あ、なんや、『止まる』になってるわ! 」
M「なってるか!(首を指しながら)どこにそんなボタンがあんねん!」
僕(Hにポットを手渡す)
H 「あ、これか、間違えた…。(Mの顔の間にポットを持っていって)はい、ごたいめーん」
M「持ってくな!気分悪いやっちゃな、ほんま…」
H「そっくりですよ」
M「似てません!」
H「あ、これ、メガネですか?ちょっと借りていいです?(Mがかけているメガネを外す)」
M「いや、ええけど、ほんま…(目の前で手を左右に振りながら後ろを向く)」
H「(ポットにメガネを乗せながら)そう言いますけど、ほら、そっくりや、これー!」
M「ええかげんさらせよ、ほんま。(ポットを奪い取って)いてもたろか、こら!(ポットでHを殴りかかろうとする)」
H「わ!やめてください、2人がかりで」
M「それも違うやろ!…あぁ!もう腹立つ!(ポットをHに投げる)」
H「ビックリした。顔だけ飛んできたんか思った」

 

いやホント、台本読むだけでも笑えてきます。ベタベタな笑いはやっぱり体に染み込んでいるんですね。

 

かっこいいゲッツー

個人的にはシュールなネタが好きです。芸人でいうと、ラーメンズバカリズムのイメージでしょうか。大爆笑ではないかもしれないけれど、おかしみがじわじわくる。観客に「ん?」と思わせておいて、「あー、そういうことね。くすくす」と笑わせる。そんなのが理想だったりします。2013年秋の「なんてたって宴会芸」では、オープンニングにシュールなネタを持ってきました。

 

登場人物は後輩Hと僕の2人。椅子に座って「どんな宴会芸をしようか」という打ち合わせをするシーンからはじまります。「宴会芸の打ち合わせを宴会芸でやる」ということ自体がシュールなのかもしれませんが、まずはホームラン狙いではなくヒットで塁を埋めていくことにしました。

 

僕「まずは宴会芸のコンセプト的なもん、決めてみる?」

H「コンセプト、ですか?」

僕「最近なにが流行ってるかな?」

H「流行ってるもの・・・野球とか?」

(※Hは大の野球好きで、早朝野球に精を出しています)

僕「それって別に最近じゃないよな?」

(※このあたりでちょっとずつ「くすくす」きはじめています)

H(急に立ち上がってセカンドを守る野球選手になり、逆シングルでボールをキャッチ、そのままショート役の僕にグラブトス)

僕(受け取ったボールをファーストに向かってジャンピングスロー)

二人「へい!」(ハイタッチ)

(※不思議そうな雰囲気の中にも笑いが・・・)

僕「なにこれ?」

(※ノッてやってるにも関わらず素に戻るわけです)

H「かっこいいゲッツーをやる遊びです」

(※ようやく意味が伝わり大きめの笑いが起こります)

僕「流行ってる?」

H「どうなんでしょう?」

 

・・・という感じで次のネタへと移行していきます。

真面目な打ち合わせから不真面目な遊びへ。

つまり緊張と弛緩によって笑いが生じるわけです。

 

やっぱり笑いには緩急が必要なんですね。

うーん、今回は野球的表現が多くなってしまいました。

 

あまちゃん漫才

入社1年目(当時)の女性社員のYとMに、「あまちゃん」に登場する「潮騒のメモリーズ」を演じてもらうことにしました。二人とも野菜嫌い(一人は王道のピーマン嫌い、もう二人はどうしてもズッキーニが克服できない)なのでコンビ名は「お野菜のメモリーズ」。なんとも安易なネーミングですが、うまい具合にハマりました(自己満足です)。

 

ま、アイドルではあるんですが、関西なんで漫才をやってもらうことに。「あまちゃん」におけるアイドルのコンセプトは「ご当地アイドル」です。そんなわけで彼女たちは、うちの会社の拠点のひとつである「尼崎市の北部に位置する塚口出身」という設定にしました。あの特徴的な大きなリボン、本家は「北の海女」ですが、こちらは「北の尼」です。これもうまくハマりました(ええ、自己満足ですよ)。

 

漫才の本筋は「上司への(愛ある)悪口」です。「自分はこれだけ上司に愛されている」と二人が自慢しあうのですが、そこにおかしなズレが生じてきます。「K次長()、ケータイのメールでやり取りするとき、ネコとかハートとかめっちゃ絵文字多用しはんねん」とY。「S部長()なんか、私が野菜食べたら褒めてくれるもんね〜」とM。そんなやり取りをしているうちに上司との年齢差の話になります。彼女たちと上司は一回り以上年が離れている。だからやり取りにちょっとした感覚のズレが生じてくるわけなんですね。そこであの名言の登場です。

 

「いわゆる、じぇじぇジェネレーションギャップってやつやな!」。

うーん、またまたハマりました(だから自己満足ですってば!)。

 

しかしこれがオチではありません。実は序盤に伏線を張っていました。

Y「私が外から疲れて戻って来たときとか、K次長、『お疲れさんさんタウン!』って言わはるんやけど、『え?どう返したらええん?』ってなるわ」

M「なにそれ。完全にオヤジギャグやん。ま、K次長はオヤジじゃなくてオバハ・・・あ、危ない危ない!」

Y「アウト〜!」

M「てかさ、『さんさんタウン塚口にあるショッピング施設ですよ』って教えてあげれば?」

Y「塚口?」

M「あ・・・」

二人「北の尼!」

いやあ、我ながら綺麗に決まりました(自己満足の極みです)。

 

そしておもむろに「潮騒のメモリー」の替え歌「お野菜のメモリー」を歌う二人。さらにサビの部分でアイドルオタクを乱入させ、本意気のオタ芸披露で「あまちゃん漫才」終演という流れです。

 

ホントは映像を見てもらったほうが伝わりやすいと思うのですが、著作権等の問題で(?)、ここでは自粛させてもらうことにします。でもまあ、このネタは僕が過去プロデュースした宴会芸の中で間違いなくベスト3に入るクオリティだったと思います。